災害と言語

 管理者は、これまで「災害」と「ことばのあり方」の関係を追究する、2つの方向性を持つ研究、それぞれに携わってきました。

 今後、これらの取り組みを柱に、災害に際して我々が直面する様々なことばの課題に取り組む新たな研究領域、「災害言語学」の構築と展開が求められると考えています。

(2016年6月 中西太郎)

 

1.災害と地域のことば

 東日本大震災のような大災害は、地域コミュニティに甚大な被害を及ぼし、地域の重要な文化の一つである「方言」にも大きな影響を与えます。

 管理者は、東北大学方言研究センター在籍時、東日本大震災と「方言」に関わる取り組みに携わっていましたが、その取り組みの成果を公開しているのが、以下のサイトです。

 同センターは、2016年現在も被災地の方言の保存活動に携わり、最近では、熊本地震に際しても、方言学的見地からの支援の取り組みを行っています。

東日本大震災と方言ネット

日本語諸方言のあいさつ表現の記録・保存

 管理者は、現在も、各地方言の記録の作業を継続しております。

 調査研究の成果は、随時、アップロードしていく予定です。

 

<調査地域実績>(2019年9月時点)

「科学研究費助成金 若手研究(B)日本語あいさつ表現に関する変化モデル構築の研究 (研究代表者:中西太郎)」などの成果による。

 

【研究成果の公開】

●2021年3月、中西太郎「新年のあいさつ・不祝儀のあいさつの定型性」『全国調査による言語行動の方言学』ひつじ書房、pp301~324

●2020年9月、中西太郎「場面設定会話と自由会話の特徴の比較―『生活を伝える方言会話』,『COJADS』の共通語訳テキストを用いて―」『計量国語学』32巻6号、計量国語学会、pp346~356

●2019年10月、中西太郎「出会いのあいさつの定型性と反復性」『生活を伝える方言会話―宮城県気仙沼市・名取市方言 分析編』ひつじ書房、pp181~202

●2019年4月、中西太郎「あいさつ、あいづち、依頼表現、呼びかけ表現、応答表現、忌み言葉、ノンバーバルコミュニケーション」項目執筆『明解方言学辞典」三省堂

2019年3月、中西太郎「あいさつ表現定型化の実態」『文化庁委託事業報告書 被災地方言の保存・継承のための方言の記録と公開2』東北大学方言研究センター、pp.65~73

●2018年5月、中西太郎「あいさつの方言学のこれまでとこれから」『コミュニケーションの方言学』ひつじ書房、pp.37~64
●2017年5月、中西太郎「言語行動の方言学」『方言学の未来をひらく―オノマトペ・感動詞・談話・言語行動』ひつじ書房、pp.339~408
●2015年9月、中西太郎「言語行動の地理的・社会的研究―言語行動学的研究としてのあいさつ表現研究を例として」『方言の研究』第1号、ひつじ書房、pp.77~102
●2014年7月、中西太郎「柳田が導く日中の出会いのあいさつ表現研究の可能性」『柳田方言学の現代的意義―あいさつ表現と方言形成論』ひつじ書房、pp.59~77

2.災害と日本語非母語者のことば

 管理者が携わった研究「科学研究費助成金 基盤研究(C)命綱としての日本語-緊急時コミュニケーションの社会言語学的総合研究(研究代表者:山下暁美)」の研究成果物です。

 東日本大震災のような大規模な災害発生時には、日本語が不自由な方々は、十分な情報を得られず、得てして不利な立場に置かれてしまいます。電気が確保できないような状態ではスマートメディア等の翻訳も利用できず、通訳ができる方が身近にいるとも限りません。そこで、最低限必要な情報を翻訳して理解するためのツールが必要だと考えました。

 これは災害時に情報弱者となる日本語非母語話者の情報取得支援を目指して作成したツールです。災害時によく使われる、難易度が高い語彙について、「もっとやさしい日本語」訳、英語訳、中国語訳、韓国語訳をつけて解説しています。「もっとやさしい日本語」は、実態調査に基づき、在留外国人の方の意見を取り入れて考えた「やさしい日本語」です。カードは名刺サイズに折りたためる仕様になっています。

 ご自由にダウンロードしてご利用ください。

災害支援カード(もっとやさしい日本語訳付)

ダウンロード
災害支援カード(141001).pdf
PDFファイル 408.4 KB

<外側>

<内側>

もっとやさしい日本語の普及と災害支援ツール開発の取り組み

 管理者は、日本語非母語話者への情報取得支援の研究のさらなる発展を目指した研究活動に取り組んでいます。

(「科学研究費助成金 基盤研究(C)多文化共生社会に向けての災害時コミュニケーションに関する総合的研究 (研究代表者:津田智史)」)

 研究の成果は、随時、アップロードしていく予定です。

自治体防災マニュアルの語彙調査

●自治体Web サイトにおける防災マニュアルの語彙難度について
―もっとやさしい日本語による情報支援実現のための基礎調査―(2016年9月)

 

 日本語教育国際大会における発表内容です。もっとやさしい日本語による言い換えデータべース作成のため、自治体の防災マニュアルに含まれる難度の高い語を洗い出す作業を行い、その成果を示しました。

ダウンロード
ICJLE 2016 Bali 発表資料
Taro-Nakanishi_Language Policy.pdf
PDFファイル 413.5 KB

●自治体Webサイトにおける多種防災マニュアルの語彙難度について

―もっとやさしい日本語による情報支援実現のための基礎調査(2018年2月)NEW!

 

 

 科研費研究課題基盤研究(C)( 15K02672)「多文化共生社会に向けての災害時コミュニケーションに関する総合的研究 (研究代表:津田智史 宮城教育大学)」の成果報告書に執筆した内容です。上記発表内容をまとめ、自治体の防災マニュアルに含まれる難度の高い語を災害ジャンルごとに分析した結果を示しました。

ダウンロード
「自治体Webサイトにおける多種防災マニュアルの語彙難度について」『多文化共生社
PDFファイル 2.8 MB